近年、公共の場においても禁煙スペースが増え、分煙もすすめられるなど、喫煙に対する対策がさまざまなところで取り上げられています。2020年4月、健康増進法の一部を改正する法律が全面施行されました。改正法は、望まない受動喫煙の防止を図るため、特に健康影響が大きい子ども、患者の皆さんに配慮し、多くの方が利用する施設の区分に応じ、施設の一定の場所を除き喫煙を禁止するとともに、管理権限者の方が講ずべき措置等について定めたものです。ここでは「たばこと健康」についてご紹介していきます。
喫煙は有害物質を吸い込む行為
たばこの煙の中では様々な「燃えかす」が生成されます。「燃えかす」の中には、一酸化炭素・ニコチンといった身体に悪影響を及ぼす物質が含まれています。火をつけるつけないにかかわらず、ニコチン及び発がん性物質に曝露されるという点で、すべてのたばこには健康影響の懸念があります。
ニコチン
主な性質・作用:自律神経を刺激
身体に及ぼす影響:血圧が上昇する、心拍数が増加する
主な性質・作用:依存症
身体に及ぼす影響:離脱症状として、たばこへの渇望や短気、不安、集中困難、イライラ感などがある
一酸化炭素
主な性質・作用:酸素供給の低下
身体に及ぼす影響:赤血球の酸素運搬を妨げる→持続的に酸素が不足した状態(酸欠状態)になる
主な性質・作用:動脈硬化の促進
身体に及ぼす影響:善玉(HDL)コレステロールの値が低下する
タール
主な性質・作用:発がん性
身体に及ぼす影響:油のようにベタベタしている
→のどや肺に付着しやすい
→がんを誘発する
喫煙による健康障害
以下は、喫煙による因果関係を推定する証拠が確実と言われているものとなります。
がん
肺、口腔・咽頭、喉頭、鼻腔・副鼻腔、食道、胃、肝、膵、膀胱、子宮頸部、肺がん患者の生命予後悪化、がん患者の二次がん罹患、かぎたばこによる発がん
循環器の病気
虚血性心疾患、脳卒中、腹部大動脈瘤、末梢動脈硬化症
呼吸器の病気
慢性閉塞性肺疾患(COPD)、呼吸機能低下、結核による死亡
糖尿病
2型糖尿病の発症
その他
歯周病、ニコチン依存症、妊婦の喫煙による乳幼児突然死症候群(SIDS)、早産、低出生体重・胎児発育遅延
禁煙をした際に得られる効果
直後
周囲の人をタバコの煙で汚染する心配がなくなる。
20分後
血圧と脈拍が正常値まで下がる。手足の温度が上がる。
8時間後
血中の一酸化炭素濃度が下がる。血中の酸素濃度が上がる。
24時間後
心臓発作の可能性が少なくなる。
数日後
味覚や嗅覚が改善する。歩行が楽になる。
2週間〜3ヶ月後
心臓や血管など、循環機能が改善する
1ヶ月〜9ヶ月後
せきや喘鳴が改善する。スタミナが戻る。気道の自浄作用が改善し、感染を起こしにくくなる。
1年後
肺機能の改善がみられる。
※軽度・中等度の慢性閉塞性肺疾患のある人。
2~4年後
虚血性心疾患のリスクが、喫煙を続けた場合に比べて35%減少する。脳梗塞のリスクも顕著に低下する。
5~9年後
肺がんのリスクが喫煙を続けた場合に比べて明らかに低下する
10~15年後
様々な病気にかかるリスクが非喫煙者のレベルまで近づく。
※参考資料:厚生労働省HP、日本生活習慣協会HPより